微分の意味
「微分積分なんて人生で何の役に立つんですか!」なんていうのは主に数学が嫌いな人から(?)よく叫ばれるような気がします。この中の「微分積分」がもっと大きな「数学」という言葉に置き換わることも多々あります。
確かに大人になって自らの手で微分の計算をする機会というのはまずないのかもしれませんが、改めて言葉にするのも憚られるくらいに、数学も、その一領域である微分積分も目に見えない形で人生の役には立っています。しかし、今回はそういうことを言う人に講釈を垂れるわけではありません。
「微分の意味を考えて問題を解いてた人って結構少ないんじゃないか?」ということついて書いていこうと思います。
※先に断っておきますが、ここでするのは高校数学までの範囲のふんわりした話で、厳密な解析学の議論をしたいわけではない(そもそも真面目にやってないからできないという説がある)ので、ご容赦ください。
「グラフの概形を書け」「最大値(最小値)を求めろ」「極値をもつ条件を答えろ」など微分を使って解く問題はたくさんあります(もちろん微分を使わない場合もありますが)。
これらの問題で「なぜ微分を使って解くのか」ということを考えたことはありますか?
そしてそもそも「微分」とは何を表しているのでしょうか?
僕は高校生の時、数学の「そういうところ」ばかり考えていました。因果律的な考え方が好きなので(?)。その解法を採択した結果には必ず原因となる理由があるはずなんですよ。あなたがラマヌジャンのような人物でもない限り。
微分というのは傾きという概念と非常に関わりがありました。誤解を恐れずに言うと「ある関数の微分というのはある瞬間にその関数がどう変化していくかを表している」と僕は思うようにしています。ガバガバすぎて炎上しそうですね。
でも、自分の感覚で数学をつかむのも大事なことだとは思うんですよ。他の人にも「(厳密に正しいかは何とも言えないけど)何となく言ってることはわかる」くらいの感覚で。
なぜなら僕らは数学をプログラミング言語のように少しの文法の誤りも許さない形で書かずともその意味を忖度できるんですから。「yはxの関数」というステートメントに型エラーを起こしてる人もいましたが、そういう指摘は機械に任せれば良いと思うのです(もちろん、そういう指摘をせずとも本当の仕組みがどうなってるかを理解しておくのは大事ですが)。
話が逸れました。戻ります。
そんな意味をもった「微分」という道具を、問題の中でどう使っていくかが高校数学では大事になってくると思います。先ほどの3つの問題について、それぞれなぜ微分を使うのか見ていきたいと思います。
グラフを描く問題では、簡単なグラフ(初等関数の一部)であれば形は覚えていれば書けます。例えば3次関数を書けと言われると多くは山と谷を1つずつもつあの形が思い浮かびますよね。でもどれくらいの高さなのかはわからないし、どのタイミングで山の頂点、谷の底になるのかはわからない。
でも、微分した値を追いかけていくと、増加が止まり減少に転じたところが山の頂点になるし、減少が止まり増加に転じたところが谷の底になることがわかります。微分するとちょっとだけ詳細なグラフの情報を得ることができるのです。だから、グラフを描く問題で微分を使ったんです。
続いて、最大値(最小値)を求める問題ですが、これは最大化(最小化)の対象となる関数のグラフが書けるならばとても簡単です。グラフを見て一番高い(低い)ところの値を答えれば良いのですから。そして、先ほど言った通り微分を使うとグラフが描けるので、この問題でも微分が登場するのです。
最後に、極値が存在する条件を求める問題です。まず極値をというのはグラフでいう山の頂点(特に、極大値と言います)や谷の底(特に、極小値と言います)にあたります。
先ほども言った通り関数の値について、増加が止まり減少に転じたところが山の頂点になりますし、減少が止まり増加に転じたところが谷の底になりますから、この「増加と減少の切り替わり」が起きれば良いわけです。それを知る手がかりは「微分した値」であり、その値が「正から負」または「負から正」に変わるところが存在するように条件を決めてやれば良いのです。だから、この問題にも微分が絡んでくるのです。
以上、僕なりに思いつく微分を使う理由を書いてみました。明らかに間違ったことは言っていない……はず。
他にも、不等式の証明であったり、極限値を求める問題であったり、微分を使う問題は最初に言った通りたくさんあります。でも、そのひとつひとつに微分を使う「意味」があるのです。
本当に、学校の先生にはこの「意味」を理解させる教え方をして欲しいなあと思うばかりです。もちろん、個人の理解度に差はありますし、そういう考え方を学ぼうとしない子もいますし、いつまでもそこに時間をかけられない状況もわかるのですが……。
そういう「意味」を考えることが数学で身に付けて欲しいことなんじゃないかな、と個人的には思っています。相手を納得させる理由を考えるときに役立つ能力でもありますし(ロンリテキシコーリョク、ってやつですね)。
結局冒頭で言ってたことは嘘になっちゃいましたね。講釈垂れてすみません。
P.S. 数学でもなんでも、片足突っ込んであーだこーだ言ってるくらいが一番楽しいのかもしれませんね。