三角関数は教えなくて良いのか?

大阪で知事とかやってた某人によると「三角関数は選択制で良い」そうですが、今日はそれに反論する格好の材料を見つけたので。

 

防衛省もやらかしましたね。

 

現在、秋田県の新屋演習場にイージス・アショアと呼ばれる陸上配備型ミサイル迎撃システムを配備する計画が進んでいます。複数ある候補地から新屋演習場が最適だとする根拠を示す資料に誤りがあったことが連日報道されています※1。

 

具体的にはどのようなミスだったのか一応軽く書いておきますと、イージス・アショアのレーダーを使用するには周囲に高い山などの遮蔽物があってはいけません。そのため、候補地となる国有地の周囲の山がどれくらい高いか(見上げたときにレーダーを遮蔽する角度ではないか)ということを調べる必要があります。この角度の算出にミスがあったということです。

 

ミスが発覚したのは、秋田県の新聞社である「魁(さきがけ)新報」という新聞記事で、とある新聞記者の方が防衛省の調査結果に誤りがあると指摘したことに端を発します。

 

県内で一番高い山(鳥海山・2236m)と、資料で取り上げられた山の1つ(本山・715m)の測量された角度がわずか2°しか変わらないことに違和感を覚えたことから、手計算をし直したところ資料の値と異なること結果を得たそうです。

 

後日、太陽と山の頂上が重なるタイミングから角度を算出してもやはり防衛省が示した値と異なり、専門家が調べても防衛省の値ではなく手計算の値と一致する結果が得られたことで、問題の発覚に至ったそうです。

 

こういう新聞記者の方は素晴らしいですね。数字の感覚もしっかり持ち合わせている教養、しっかり自らの手で足で検証して真実へと辿り着く姿勢。尊敬の念を抱きました。

 

さて本題に近づきますが、この角度の算出に使われるのが三角関数です。「選択制で良いじゃないか」と言われた三角関数です。

 

三角関数は、腐るほど世の中に使われています。今回のような測量技術にも使われますし、建物の設計なんかにも当然必要でしょうし、3Dの映像を動かすのにも使われています※2。

 

この新聞記者さんが学生時代理系だったのか文系だったのか、そもそもどんな成績だったのかは知りません。ですが、三角関数にどこかで触れていて「三角形の辺の長さから角度が出せる」というような、そういう知識があって、今回それを使うことで真相を明らかにできたわけです。

 

他方、防衛省はというと、なんとGoogleのデータ※3に定規や分度器をあてて角度を出したそうです。もちろん、この手法も縦と横の比が現実を反映している場合有効な手段なので、まったくダメなわけではありません。しかし、標高が1500mほど違う山に対して(横方向の距離が異なる可能性があるとはいえ)2°しか差が出なかったことに何の疑問を持たないのは非常に残念でした※4。

 

当然防衛省の人も三角関数を習ったはずですが、なぜか気づくことができませんでした。確かに、誰でもミスはしますし、僕も正直内部関係者として作業していれば100%おかしいと気づけるかはわかりません。

 

ですがそのときに、上で登場した新聞記者のような人材が必要なのです。間違っていることに気づき、きちんと指摘することのできる人が。

 

もしこの指摘がなければ誤った前提を元に配備計画が進み、国益を損なう結果につながったかもしれません。

 

そして、そういう人材を育てるために必要最低限の知識は教えるべきです。三角関数もその1つです。

 

別に三角関数のことを深く理解して使える必要はないと思います。数学を意識せずに数学を利用できるようになってきていますから※5。

 

でも、そういう概念があるということに触れずに育ってしまえば、今回のように問題があっても気付けずに知らず知らず不利益を被る可能性があります。まして、三角関数なんて身の回りに溢れているのに。

 

だから、勉強が大事なんです。きちんと生きるには、自ら考えるための体力を身に付ける必要があるんです。教える内容も、ある程度広さを保たなければならないんです※6。

 

そういう理由から、本当の天才で、数学を捨てても他の才能が余りある天才でない限りは三角関数を学ばせる必要があると僕は考えています。

 

以上、三角関数というか勉強をする意味というかについて軽く書いてみました。

 

正直僕が学生の頃はこんなこと考えてなくて「周りに負けたくない」が勉強のモチベーションだった気がしますが(笑)ラッキーでしたね。

 

それでは。

 

※1住民への説明会で居眠りした職員がいたが、資料のミスに対応するのに徹夜でもしてたのかと思う。だが、それならわざわざ説明会に出席しなくても良かったのにと思うし色々失望させられてしまう。

 

※2僕の浅い教養ではパッと浮かぶのがこれくらいしかなかった、残念。

 

※3ワイドショーで専門家も指摘していたが、そもそもGoogleマップじゃなくて国土地理院の地図を使えよとも思う。

 

※4仮にも国家公務員試験を通過しているはずなのに。

 

※5もちろん数学を利用する立場になりたいならきちんと理解する必要はあるが。

 

※6数ある省庁の中で文部科学省が一番大事と考える理由の大きな1つである。