審判にペナルティは必要か
連日の野球についての投稿になります。
昨日のセ・パ交流戦、ソフトバンク-中日3連戦のカード最後の試合、8回表中日の攻撃。
走者なしから中日の大島選手が放った打球は高々と舞い上がり右翼手の頭上を越えライトフェンスを直撃。大きく跳ね返ったボールが外野を転々とする間に俊足の大島選手はホームへ突入。ボールを拾ったセカンド明石選手がホームへ送球しクロスプレーとなります。
判定は、アウト。確かに、タイミング的には完全アウトでした。
ここで、中日・与田監督がリクエスト※1を要求。審判団が映像を確認しに向かいます。
スローの映像を見ると、すごく微妙ですが、角度によってはヘッドスライディングでホームベースを狙った走者・大島選手の手が捕手・高谷選手のグラブが大島選手の肩に触れるよりわずかに早くホームベースに達しているようにも見えます※2。
しかし、長い中断の後、映像を確認した審判団がグラウンドに戻り下された判定は、アウト。判定が覆ることはなく、中日ベンチからは抗議の声が上がり、球場もざわめきました。
審判団は「(判定の)変更に値する確証を得られる映像がなかった」という理由で当初の判定通りとしたとのことですが、当方阪神ファンの僕でもセーフにして欲しいなと思いました。
明確に誤審とわかるものはもちろんのこと、こうした誤審ではないかという疑惑を含んだ判定が起こると「リクエストしても誤審をするなら意味がない」「判定を下した審判団にはペナルティを与えるべき」などといった声が聞こえてきます。僕も、贔屓チームの阪神に対してこのような判定を下されればどうしても同じ気持ちになることでしょう。
しかし、冷静になって考えてみると※3「誤審にペナルティを与える」のは判定の質を向上させるのに繋がるかというと、そうではないように思えました。
なぜなら、審判に「誤審である」と認めさせるハードルを高くしかねないからです。
審判もプロとはいえ人間なので、少なくとも毎試合両チーム合わせて27×2=54回のアウトの判定をする機会があれば常に正しい判定を下すのはなかなか難しいです※4。特に問題になっていない判定もスローで確認すればかなり微妙な判定も存在していると思います。
もしも誤審にペナルティを課せば、(十分に起こり得る可能性がある)誤審を認めることは審判にとってのリスクになります。特に今回のような明確に誤審とは言えない判定に対して積極的に判定を覆すことが少なくなってしまうことが予測されます。
もちろん誤審自体がなくなるのが理想ではありますが、重要なのは誤審を減らすことではなく、間違って下された判定が正しい判定に直されるかどうかだと僕は思います。
だから、誤審を認めさせるインセンティブにならないペナルティというのは、悪い意味で誤審を減らす効果はあると思いますが、良い意味で誤審を減らす効果はないと考えられます。
また同じ理由で、リクエスト制度自体も改善しなければいけない点があります。
それは、映像を検証して改めて判定を下すのが元の判定を下したのと同じ審判団であるという点です。
誤審に対してペナルティを与えろという声が強い中では、できるだけ誤審を認めたがらないようになってしまうので、自分で下した判定を支持し続けるという姿勢になってしまいます。
ですから、この体制を続ける限り「かなり微妙だが判定を覆してもよい映像」に対して、消極的な判定、つまり当初の判定通りというジャッジが下される可能性を高めてしまいます。
これを避けるためには、審判とは独立した立場の第3者が映像を確認して判定を下す必要があると思います。日本のリクエスト制度に当たる、映像による判定のバックアップ制度が先駆けて実施されているメジャーリーグでは確かこのような体制をとっているはずです。
日本もなかなかコストや人材確保が難しいのかもしれませんが、引退選手のセカンドキャリアとしてもこうした映像確認専門という職業があっても良いのかと思います。
ともかくリクエスト制度の改善は今後期待するとして、結論をまとめると、審判にペナルティを求める姿勢というのは改めた方が良いのではないでしょうか。
審判が誤審を認めやすくする環境を我々が作っていくことで、誤審はなくせなくても正しい判定を下そうとする姿勢を評価することで、判定の質は向上していくはずです。
それに、間違えても真摯な姿勢で正しい判定に覆す方が、誤審を誤審のまま通されるよりも、審判の威厳も保つことができると思います。
誤審を誤審のまま通せば選手からの信頼も失いますし、今の時代その事実は一気に広がり長い間人々の記憶にも残ってしまいますから。
ファンとしても、誤審がなくなるよりも誤審が正しい判定になってくれる方がすっきりと試合結果を受け入れることができますし。
まあここまで色々語りましたが、所詮僕にできることは阪神の試合で誤審がないように祈ることだけですね(笑)
今回の記事はこれくらいで。それでは。
※1プロ野球には、2018年シーズンからリクエスト制度というものが設けられている。これはアウトの判定とホームランのフェア・ファウルに対し誤審があったと主張し、映像による確認を審判団に求めることができる制度で、毎試合各球団2回ずつ権利が与えられている。判定が覆ればリクエストを要請できる回数が減ることはない。また映像を確認しても判定を下すのが難しい場合、当初下された判定が優先される傾向にある。
※2大島選手の手のひらが上に反っているため、かなり微妙にはなっているが、それを考慮しても肩にミットが触れるより先にホームベースに到達している印象を受けた。
※3阪神が関わっていないために冷静な視点を持つことができた。
※4もちろん僕も、プロ野球の審判はプロなのだから常に完璧な判定を下すことを期待してはいる。